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ヨハネス・フェルメール

17世紀にオランダで活躍した風俗画家である。レンブラントと並び17世紀のオランダ美術を代表する画家とされる。生涯のほとんどを故郷デルフトですごした。

 最も初期の作品の一つ「マリアとマルタの家のキリスト」(1654-55頃)にみられるように、彼ははじめ物語画家として出発したが、やがて1656年の年記のある「取り持ち女」の頃から風俗画家へと転向していく。

 静謐で写実的な迫真性のある画面は、綿密な空間構成と巧みな光と質感の表現に支えられている。

 現存する作品点数は、研究者によって異同はあるものの33~36点と少ない。

このほか記録にのみ残っている作品が少なくとも10点はあるが、記録に残っていない作品を勘案しても22年の画歴に比してやはり寡作というべきだろう。

 人物など作品の中心をなす部分は精密に書き込まれた濃厚な描写になっているのに対し、周辺の事物はあっさりとした描写になっており、生々しい筆のタッチを見ることができる。この対比によって、見る者の視点を主題に集中させ、画面に緊張感を与えている。

「レースを編む女」の糸屑のかたまり、「ヴァージナルの前に立つ女」の床の模様などが典型的な例として挙げられる。

フェルメールは、描画の参考とするため「カメラオブスキュラ」という一種のピンホールカメラを用いていたらしい。これにより、正確な遠近法を可能にしている。

 少女の髪や耳飾が窓から差し込む光を反射して輝くところを明るい絵具の点で表現している。

この技法はポワンティエ(pointille)と呼ばれ、フェルメールの作品における特徴の1つに挙げられる。

また、フェルメールの絵に見られる鮮やかな青は、「フェルメール・ブルー」とも呼ばれる。

この青は、天然「ウルトラマリンブルー」という絵の具で、「ラピスラズリ」という非常に貴重な鉱石を原材料としている。

ラピスラズリは、17世紀には金よりも貴重であったといわれ、「天空の破片」とも呼ばれた。

ラピスラズリを非常に細かく砕き、乳鉢ですりつぶして粉末状にしたものを溶液に溶かし、上澄みを捨てて純化し、それを植物油脂でとくことによって「ウルトラマリンブルー」は生成される。

ウルトラマリンブルーは通常の青い絵の具の百倍の値段がついたとされ、通常の画家はマリアのマントなどの限られた部分にしか使わない貴重な絵の具であった。

しかしフェルメールはこのウルトラマリンブルーをふんだんに使った。

彼はなんと、ウルトラマリンブルーをドレスの下地に使うという、当時の常識としては考えられない使用法を用いた。

フェルメールが亡くなったときに多額の借金があったといわれるが、あるいはこのような高価な画材でさえも躊躇なく使ったそのこだわりが借金の原因の一つだったのかもしれない。